飯田線車窓展望記 #2/2
(フォトストーリイ取材記 兼 CG解説)
となりの桜町までは1kmもない。野底川という小さな川を渡り、また1kmほどで次の駅に
着く。飯田線の駅間距離は平均2kmほど。駅が多いのは戦前の私鉄時代の名残
であるという。
伊那上郷を出る。列車は大地に身を沈め、短いトンネル。やがて段丘崖を下り始める。急な崖
には竹が密生している。竹林はかつて伊那谷のあちこちに見られたそうだ。やがて崖を降りきる
と、左側に元善光寺の大きな赤い屋根。元善光寺の駅に着く。
列車はここから天竜河畔を行く。向こう岸にも小規模だが河岸段丘と川の削った谷の織りなす
ページェントが見られる。伊那谷の地形は田切り地形と呼ばれる。開けて見える景色も、実際
に自分の足で歩いてみると、段丘崖と天竜川に注ぐ支流とによって縦横に細かく仕切られ
ていることがわかる。
左側の車窓には丘の上にちらちらと中央アルプスが顔を出している。
市田を過ぎると、塩身岳の印象的な三角錐が現れる。下平。
左車窓に段丘崖が迫ってくる。汽車は再び段丘崖を登り始める。山吹。
汽車は大きくカーブ。
切り通し。そして再び段丘の上へ。息つく間もなく
次の段丘崖にかかる。伊那大島。赤石が小渋川の方向の前山の切れ目から姿を
見せる。荒川岳は赤石と塩見の間で身をすくめている。意外なアルペン的な相貌を
みせるのは小河内岳。
電車はカーブして片桐松川を高巻く。右前方に中央アルプス。仙涯嶺、南駒、赤椰岳、
空木岳、の四嶺が肩を突き出して厳つく見おろす。列車はさらに登る。
飯田線の線路は地形をなめるように縫って
いく。人工的な直線がほとんどない。上片桐。
<写真=窓に移っているのは本物の南アルプス>
さらに登る。左側は広大なナシ畑。赤石はいよいよ神々しい。伊那田島。
電車は左右に首を振り、谷を巻き、さらに登る。右前方に陣馬形山。切り通し、川、切
り通し、そして無人の高遠原駅。自転車だけが、ここが駅だと主張しているようだ。
駅前通りはなくても、自転車置き場は各駅に設置されている。
中央アルプスはいよいよ間近い。白く化粧した四つの嶺が壮麗な鋭角を空に突き刺し
ている。広々とした高原。標高700m近い高原の駅、七久保へ。
電車はここからようやく下り始める。大きくカーブ。深い谷が迫る。段丘崖を一つ降り、
伊那本郷。平べったい陣馬形山が正面。南アルプスはずいぶんと隠されてしまった。
しかし北方には遠く美ヶ原が見えてきた。下りながら谷を巻く。
前方に明るい山々が見えてくる。飯島に到着。伊那谷の旅もいよいよ後半へ。
というところで、作成したCGはここまで。次回をお楽しみに。
(Aug. 26, 1996)
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このページの写真は1994年10月、1994年12月、1995年12月、1996年2月、1996年5月に撮影しました。
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